日本歯科大学新潟病院医科病院

あごの関節・歯ぎしり外来

あごの関節・歯ぎしり外来とは

あごの関節・歯ぎしり外来は、顎関節症と歯ぎしりの治療、およびこれらの障害に付随する種々の症状の改善を目的とした外来です。 本紹介では、顎関節症と歯ぎしりについて、本外来で用いている、生活習慣や習癖指導、運動療法を中心とした、リハビリテーション理論に基づく治療法を解説します。

1. 顎関節症

◆顎関節症(がくかんせつしょう)とはどんな病気?

顎関節症は「顎顔面痛=あごや頭、顔が痛い」「開口障害:口が開かない、開けにくい」「関節雑音:あごを動かすと関節が鳴る」などのあごの不調を示す病気です。

食事や会話の妨げになるだけでなく、症状が強い人では頭痛や首・肩の痛み・憂鬱(ゆううつ)感など、あご以外の症状を伴う場合もあります(表1:顎関節症の症状)。

「あごの関節外来」は最近増えている"顎関節症"や、寝ている間に生じる"歯ぎしり"の治療を行っている専門外来です。

表1:顎関節症の症状

あごの痛み 耳の前にある、あごの関節が痛い(図1) 口を開け閉めする筋肉(こみかみ、ほっぺたにある)が痛くなる。
開口障害 口が指1~2本分しか開かない。スムーズに開かない。※開口するとあごが横にずれる。
顎関節雑音 あごを動かすと、耳の前でカクカク、ガサガサする音がする。
その他の症状 頭痛、首や肩の痛み、食欲不振
図1

図1。顎関節は耳の前の方に、またあごを閉じる筋肉は"こめかみ"や"ほほ"の部分に存在します。

◆なぜあごの症状が出るの?

患者さんによって障害の現れるメカニズムが異なりますが、あごの筋肉の異常なこりや緊張、関節内の微小な損傷、関節をスムーズに動かすために必要な軟骨(関節円板)のずれ、関節の潤滑液(滑液)の異常によって発症します(図2、1~4)。時間がたつと自然に症状が軽減する場合もありますが、痛みや運動障害が強くなる事もあるので、症状を認める方は早めに診察を受けることをお勧めします。

顎関節症の原因はいろいろありますが(表2)、通常発症にはこれらの原因が複合的に関与するうえ、患者さんによってその組み合わせが異なります。したがって、患者さんに適した治療を行うためには、詳しい診査を行って原因を確認する必要があります。

図2-1正常な顎関節

図2-2関節円板のずれ

図2-3動きの悪くなった関節

図2-4骨が変形した関節

表2:顎関節症の原因と考えられる因子

歯やあごの構造的な問題 かみ合わせや歯並びの異常、あごの成長発育の不良、不適切な歯科治療、虫歯や欠けた歯を放置している。関節が弱く負担に対する抵抗性が低い。
あごの習癖異常 歯ぎしり、くいしばり(上下の歯を強く接触させること:図3)姿勢の不良、舌・嚥下の癖、口呼吸。
生活習慣 ほおづえ、早食い、ガム咀嚼、激しいスポーツや楽器演奏(主に管楽器)、うつぶせ寝、堅い物が好き、過剰な開口、不良な作業姿勢、長時間のコンピュータ操作。
社会・心理的な環境 仕事や生活でのストレス、性格、心理的トラブル。
◆顎関節症の治療はどのように行うの?

当外来では、副作用が少なく効率的な治療としてリハビリテーション理論を取り入れた保存療法を中心に治療を行っています。 実際の診療は次のような手順で行います。

ステップ1

診査,原因や誘因の改善。
画像検査も含めた詳細な診査を行った後、"歯ぎしり"や"くいしばり"の習癖や生活習慣の改善を行います。

ステップ2

基本治療(症例に応じて選択します)

  • 障害の改善を目的にした"運動練習"(図4)
  • 筋肉の緊張や関節の痛みを抑える"薬"の投与
  • 筋肉や関節を保護する"マウスピース"の装着(図5
  • 部分的な"かみ合わせ"の調整
  • 関節の注射による"関節内の洗浄"
ステップ3

追加的な治療(ステップ2で十分な効果が得られない時に選択します)

  • 矯正治療(歯並びやかみ合わせを修正します)
  • 外科的手術(関節の整形や癒着した関節を修正します)
  • 補綴治療(冠やブリッジ、入れ歯の治療を行います)
  • 他の病院との連携(神経内科、心療内科、内科、耳鼻科、精神科)

ステップ2までの基本治療はすべて保険適応となります。ステップ3では矯正治療や一部の補綴治療が自費診療となりますが、大部分の患者さんはステップ1~ステップ2の治療で対応が可能です。

図3 マウスピース(スプリント)

図3 マウスピース(スプリント)。
通常夜寝るときに使用します。

図4 患者さんの行う運動練習

図4 患者さんの行う運動練習

2. 歯ぎしり

◆歯ぎしりとは?

 普通歯ぎしりと言えば,寝ている時にギリギリ,カチカチする音で,周りの人がうるさい物と認識している人が多いと思います。 しかし,歯ぎしりには、音のしない物や、日中目覚めているときに発生する物(くいしばり)も存在します。 また、歯ぎしりに付随する障害は、単に音がうるさいだけでなく、顎関節症、歯の摩耗や喪失、頭痛などを種々の障害を引き起こす場合もあります。 これらの障害は、音のしない歯ぎしりや、日中のくいしばりに付随して発生する場合もあります。


◆強い歯ぎしりに伴う障害とは?

はぎしりそのものは、疾患とは言えず、短時間かつ軽度の物は健康な人でも観察されます。 しかし過剰な歯ぎしりが長時間続いた場合は、口腔や頭頸部にさまざまな障害が生じることが知られています。 最近歯科領域では、歯ぎしりや、くいしばりが原因となる障害が注目されていますが、これらの障害は、歯ぎしりや、くいしばりに起因する過剰な力が関与することから、歯圧縮症候群( Dental Compression Syndrome)と呼ばれています。

表3 過剰な歯ぎしりや、くいしばりが関与すると考えられる障害

歯や口腔の障害
  • 歯の移動,歯列不正,摩耗,根の破折,歯の喪失
  • 知覚過敏(歯がしみる),咬合痛(歯が痛い)
  • 歯周病や、う蝕の増悪
  • 冠やブリッジ歯の破損,脱離
  • 歯列不正,歯の摩耗など審美的な問題
  • 顎関節症
口腔および周囲全身の障害
  • 頭痛(緊張型頭痛)や、肩こり。
  • 違和感や疼痛に伴ういらいら.不安,ストレスの増加
  • 睡眠障害
  • 交感神経の刺激による,高血圧や胃腸障害への影響
図5 強い歯ぎしりを認める患者さん

図5 強い歯ぎしりを認める患者さん

強い歯ぎしりは、顎関節症の原因となるだけでなく、 歯の境目がかけたり削れたりする"楔状欠損"を引き起こし、見た目にも影響を及ぼします。

図6-1マウスピース(スプリント)

図6-1, 2 強い歯ぎしりのために破折した歯根

図6-2 患者さんの行う運動練習

はぎしりが強い患者さんでは、突然歯や歯根が折れることが有ります。 多くは以前に神経の治療を行いもろくなった歯で発生しますが、歯周病の管理が良好な患者さんでも認め、また発生した場合は抜歯となることが多いため、最近では、成人の歯が喪失する原因として注目されるようになっています。


◆強い歯ぎしりへの対処

強い歯ぎしりが存在し、種々の障害と関連すると考えられる場合は次のようなステップで診査し、対応します。

【診査】

  1. 詳しい問診や口腔内診査を行って、歯ぎしりの種類や発生状況を確認する
  2. 障害部位や程度を評価して、歯ぎしりとの関連を調べる
  3. 歯ぎしりを増加させる、生活習慣や食習慣、薬物投与を調査する

【対処】

  1. 原因や誘因となる、習慣や習癖、薬物投与の修正
  2. リラクゼーショントレーニングによる筋緊張の修正
  3. 1, 2で十分な症状の軽減が得られない場合は、マウスピースや薬物による治療を実施

顎関節症や歯ぎしりが気になる方は

適切な治療を行うためには、詳しい診査を行った上で、疾患や障害の状態に適した治療法を選択する必要があります。 本外来ではトレーニングをつんだ専門のスタッフが対処するため、複数の患者さんが同時に来院されると、長時間お待ち頂く場合もあり、来院時には事前にお電話で御確認を頂くことをお勧めします。

診療日:
月曜から金曜
診療時間:
午前9:00〜12:00 午後1:30〜6:00
初診:
午前9:00〜11:00 午後1:30〜4:00
電話:
025-267-1500
(日本歯科大学新潟病院 あごの関節外来 医長 永田和裕)