歯学,vol.80,567-579,1992.

生活歯支台におけるキャスタブル・セラミックス(OCC)の臨床成績

−第1報 短期的観察−

伊藤康子 河田和子 飯島 浩 山崎博子 井田 泉 前田利夫 村山文隆 黒川裕臣 畑 好昭

日本歯科大学新潟歯学部歯科補綴学教室第2講座

(主任:畑 好昭教授)

要旨:

マイカ結晶とβ-スポジウメン結晶を析出するオリンパス・キャスタブル・セラミックス(OCC)を用いて,生活歯支台にインレー20,アンレー10,フルベニアクラウン10症例を装着し,患者リコール時に,9種の評価項目についてU.S.P.H.S.の評価基準を参考にし,口腔内での視診およびレプリカ模型によるSEM観察もあわせて行い,次のような結果を得た。

 1)試験症例の経過期間は,平均6.8カ月であった。表面粗さ,辺縁部変色,二次齲蝕,対合歯の磨耗,隣接面コンタクト,体部破折の6項目については,すべての修復物に異常および変化は認められなかった。

 2)すべての症例において,色調の経時的な変化は観察されなかった。OCC修復物の多くは,天然歯に比較して透明性が少ないと判定されており,結晶化条件を含めた色調再現法の検討が必要と考えられる。

 3)OCC修復物のうち10症例に辺縁部の微細なチッピングが観察された。レジンセメント使用のものの方がグラスアイオノマーセメントよりもチッピングの発生率が低かった。

 4)OCC修復物で9症例に歯髄反応が認められたが,歯髄保護作用を有する接着性ライナーの使用不備に起因する1症例を除いて,すべて経時的に消失した。

 5)使用セメントの選択や歯髄保護対策を厳密に行うことにより,生活歯支台を対象としたOCC修復物は臨床上の安全性は確保でき,有効性は高いと思われる。

キーワード:キャスタブル・セラミックス,臨床治験,生活歯,結晶化ガラス,マイカ

1.緒言

 歯科用ポーセレンは,1889年にCharles H. Landによって発表され,審美性や耐摩耗性に優れているため,ポーセレン・ジャケットクラウンやポーセレン・インレーとして臨床に使用されるようになった。しかし,焼結反応を応用したポーセレンは,焼結体内部に微細な気孔が存在し,セラミックス本来の性質が十分発揮できない。このため,臨床において長石質ポーセレン単体の修復物は破折することが多かった。

 1965年にMcLeanは,Al2O3を含有するアルミナス・ポーセレンをコア材として用いて耐久性の向上を図ったアルミナス・ポーセレン・ジャケットクラウンを発表した1)。さらに,McLeanらのツインホイルテクニック23),そして箔焼付ポーセレン・ジャケットクラウン4)などが開発・発表されたが,強度の改善や技工操作の繁雑さおよび欠損補綴応用への困難さから,現在では陶材焼付鋳造冠がセラミックス製歯冠修復物の主流をなしている観がある。

 しかし,近年の審美性意識の向上により,再び,ポーセレンを主体としたオールセラミックス・レストレーションが注目され,ポーセレン・ラミネートベニアやポーセレン・インレー等の研究・臨床報告が多くみられる。この背景には,セラミックスへの接着性をもったセメントシステムの開発,耐火模型材の改良,高強度のセラミックスの開発などがあり,種々の異なった適応症例に積極的に使用されつつある。

 キャスタブル・セラミックスは,従来の金属鋳造に用いられているロストワックス法を準用してセラミックス製修復物を製作できることから,インレーやアンレーのような複雑な窩洞形態を必要とする修復や,ラミネートベニア修復のようなごく菲薄なセラミックス修復物の製作もポーセレンに比較して簡便に製作でき,特別な技術を必要としない利点を有している。

 本教室では,in vivoにおける全部被覆冠形態のマイカβ-スポジウメン系オリンパス・キャスタブル・セラミックスOCC(以下OCCと略す)の安全性・耐久性の臨床試験を行い,良好な臨床成績を報告している5)。しかし,その対象を臼歯部のフルベニアクラウンにしたため,支台歯の96.9%は失活歯であった。

 井田らは,支台材料が異なった場合にセラミックス製クラウン内部に発生する応力の違いを2次元有限要素法を用いて検討し,Type 「金合金やコンポジットレジンで支台築造した支台歯に比較して,天然歯支台に装着されたセラミックス・クラウンには大きな引張応力が発生することを報告している6)。

 そこで,今回生活歯支台を対象として,インレー形態,アンレー形態,フルベニクラウン形態のOCC修復物を装着し,経時的変化について観察した。

.試験方法

1.対象患者

 平成2年7月から平成3年5月までの間に,日本歯科大学新潟歯学部附属病院補綴科に来院した患者のうち,本試験に対する理解と協力の得られた患者に対して,OCCインレー,アンレーおよびフルベニアクラウンを装着した。

 患者は,原則として全身疾患がなく,顎口腔機能に異常が認められず,歯周組織の健康なものを選択した。

2.対象症例

 有髄歯に関して,インレー,アンレーおよびフルベニアクラウンの修復が必要であり,歯質の削除を行っても歯髄組織の健康を害さないもので,さらにOCC修復物に対するコントロールを設定するため,同一口腔内に同形態の修復症例が2歯存在するものを対象とした。

3.症例内容

 OCCインレー20,アンレー10,フルベニアクラウン10症例,計40症例を臼歯部に装着した。装着した修復物の種類と使用セメントの組合せ条件およびその略語を表1に示した。

 OCCインレーのうち10症例は,光・化学重合型コンポジットレジンセメントDUAL CementVIVADENT)にて装着した(以下OCCI-Dと略す)。OOCI-Dに対するコントロールとしてDUAL Cementで装着したSR-IsositIVOCLAR)コンポジットレジンインレー(以下CRI-Dと略す)を設定した。また,OCCインレーの残りの10症例は,GLASIONOMER-C(松風)にて装着(以下OCCI-Gと略す),これに対するコントロールとしてグラスアイオノマーセメントで装着した12%金銀パラジウム合金製インレー(以下PdI-Gと略す)を設定した。同様に,OCCアンレーは,OCCO-GOCCフルベニアクラウンは,OCCF-Gと略し,コントロールとして12%金銀パラジウム合金製のPdO-GPdF-G を設定した。

4.支台歯形成および修復物製作法

 1)OCCインレー,アンレー,フルベニアクラウンの支台歯形成および修復物製作法

(1)支台歯形成

 被験歯形成は,局所麻酔下にて行った。インレー,アンレーの内側性窩洞部は外開きとした。窩洞外形線は,スムースな曲線になるようにし,線角や点角は丸めた。内側性窩洞などのイスムス幅は2mm以上,また,修復物の厚さは咬合面部で1.5mm以上になるに形成し,窩縁斜面は付与しなかった。フルベニアクラウンにおける歯質削除量は,原則として頬側,舌側で,1.5mm,近・遠心面で,1.02.0mm,機能咬頭が1.5mm2.0mm,非機能咬頭が1.21.5mmとした。偶角部は丸みを与え,マージンの形態は,ショルダーまたはヘビーチャンファーとした。

 カリエスが深く削除が歯髄に近接した場合には,BASE CEMENTDENTIN COLOR(松風)にて裏裝を行った。また,必要に応じて水酸化カルシウム製剤(KERR Life)にて覆髄処置を行った。なお,OCCI-Dにおいては,窩洞形成後,窩洞形成面には,Dentin ProtectorVIVADENT)を塗布し,乾燥後,印象採得し,即時重合レジンにてテンポラリーインレーを作製,非ユージノール系セメントにて仮着した。

(2)印象採得およびワキシング

 シリコーンラバー印象材を用いて印象採得し,通法に従い,分割復位式作業用石膏模型の製作を行い,模型上でそれぞれの修復物の適切な形態にワックス形成した。

(3)埋没

 ワックスパターンは,フルベニアクラウンおよびアンレーでは,直径3.2mm長さ10mm,インレーでは,直径2.5mm長さ10mmのワックススプルーを付け模型から取り外した。リン酸系埋没材ブルーベスト(徳山曹達)を真空練和し,ワックスパターンを大気埋没した。

(4)鋳型の加熱

 埋没後1時間以上室温に放置した鋳型を電気炉にて,60分で350℃まで昇温して30分係留,さらに800℃まで昇温して30分間係留しワックスを完全に焼却した。その後,鋳型温度を550℃まで降温した。

(5)ガラスの溶融および鋳造

 OCCの鋳造には,図1に示す専用鋳造機(オリンパス光学CM101)を使用した。OCCガラスのH-12ロッド(重さ8.5g)を,専用アルミナ製ルツボに入れ(図2),1450℃まで昇温し溶融した。その後,1250℃まで降温し遠心鋳造を行った。鋳造終了後ただちに鋳型を550℃の電気炉内に5分間保持し,鋳造時のガラス内応力の開放を行った。その後,室温中で徐冷した。

(6)結晶化熱処理

 十分鋳型が冷却したのち,鋳型からガラス状態のOCC修復物を掘り出した。これを,アルミナ製均熱箱に入れ,図3の結晶化熱処理用電気炉(オリンパス光学RC101)にて,12.5/min750℃まで昇温して2時間係留,900℃まで4℃/minで昇温させ結晶化を行った。結晶化後,炉内放冷し,100℃以下になってから,鋳造体を取り出した。

(7)咬合調整および研磨

 OCC修復物に付着している埋没材をきれいに除去し.修復物の内面を3気圧でサンドブラスト処理したのち,超音波洗浄した。模型上にOCC修復物を戻して調整し,ステイニングおよびグレージングを行った。

2)コンポジットレジンインレーの窩洞形成および製作法

 窩洞形成は,OCCインレーに準じて行った。必要に応じて覆髄・裏裝処置を行い,形成面には,Dentin Protectorを塗布した。シリコーンラバー印象材を用いて印象採得し,作業模型と重合用複模型を製作した。重合後のレジンインレーと模型の分離を容易にするために活性化したフルイドを塗布,必要量のぺーストを練り築盛した。築盛されたレジンインレーは,複模型ごと咬合器からはずして,イボマット重合器(IVOCLAR)に入れ120℃6気圧で10分間加熱・加圧重合を行った。作業模型上に重合を完了したレジンインレーを戻し,調整・研磨を行った。最終的な調整は,患者の口腔内で行った。

3)金銀パラジウム合金製インレー,アンレー,フルベニアクラウンの窩洞形成,支台歯形成および製作法

 支台歯形成は,通法に従って行い,フルベニアクラウンのマージンの形態はチャンファーとした。必要に応じて覆髄・裏裝を行い,シリコーンラバー印象材を用いて,印象採得し,模型を製作,技工操作を行った。

5.合着操作

 DUAL Cementにて合着するOCCI-DおよびCRI-Dにおいては,窩洞形成面のエナメル質のみをリン酸エッチングした。また,OCCI-Dの表面は,CLEARFIL PORCELAIN BOND(クラレ)を用いてシランカップリング処理を行った。メーカー指示に従い,DUAL Cementのベースとキャタリストを練和し,修復物を合着,余剰セメントを除去し,光照射を行い重合した。

 OCCI-GOCCO-GOCCF-GおよびPdI-GPdO-GPdF-Gにおいては,グラスアイオノマーセメントをメーカー指示に従い練和し,修復物を合着した。

 使用材料を表2に示した。

6.臨床試験観察方法

1)経過観察時期

 修復歯の術前,合着,1週間,3カ月,6カ月,1年経過時に各評価項目について問診および視診を行った。また,修復歯になんらかの異常を認めた場合には,ただちに当病院へ連絡するよう指導した。

2)評価項目

 評価項目は,

1.色調安定性

2.辺縁適合性

3.表面粗さ

4.歯髄反応

5.辺縁部変色

6.二次齲蝕

7.体部破折

8.対合歯の磨耗

9.隣接面コンタクト

の9項目とした。各項目の評価基準は,

 United States Public Health ServiceU.S.P.H.S.)の評価基準7)を参考に,今回の試験に適応するように改編した。各項目の評価基準を表3に示す。辺縁適合性は,4段階,二次齲蝕は,2段階,他の項目は3段階に評価を分類した。評価方法は,各リコール時に2名の判定者が個別に被験歯を評価する二重盲検法にて行った。2名の判定者間に差が生じた場合は,さらにもう1名の判定者が評価を行い,一致した評価を採用した。

 また,各リコール時に修復歯の口腔内カラー写真撮影およびX線写真撮影を行った。さらに付加型ビニルシリコーン印象材EXAFLEXGC)を用いて修復歯の精密印象採得を行った。得られた印象内面には,歯科用エポキシ樹脂のEPOXY-DIEIVOCLAR)を注入して,レプリカ模型を作製し,走査型電子顕微鏡(日立明石社S-800)(以下SEMと略す)にて,加速電圧15kVpで観察を行い,評価決定の資料とした。

。.臨床試験結果

1.被験者の構成および装着部位

 修復物装着時の被験者は,男性24名,女性10名の計34名,平均年齢25.5歳であった。被験者の年齢の分布を装着修復物別に図4に示した。図5にOCCI-DとそのコントロールであるCRI-Dの装着部位の分布を,同様に,図6にOCCI-GPdI-Gの,図7にOCCO-GPdO-Gの,図8にOCCF-GPdF-Gの装着部位の分布を示した。この結果,OCC修復物の装着された部位は,大臼歯32歯,小臼歯8歯の計40歯であった。患者総数と被験歯総数が一致しないのは,2歯のOCCインレー,アンレーおよびフルベニアクラウンを装着した患者4名と3歯のインレー,アンレー,フルベニアクラウンを装着した患者1名を含むためである。

2.装着期間

 平成3年9月10日現在の修復物別の装着期間を図9に示す。

 最長12カ月,最短4カ月,平均6.8カ月であった。

3.臨床成績

 試験期間中,表面粗さ,辺縁部変色,二次齲蝕,対合歯の磨耗,隣接面コンタクト,体部破折の6項目については,すべての修復物に異常および変化は認められずA判定であり,経過は良好であった。そこで,臨床経過で評価に変化があった項目について述べる。

1)色調安定性

 各リコール時の臨床成績を表4に示す。

 OCC修復物のうち31症例が装着時にBと判定された。B判定されたもののすべては,透明性が天然歯に比較して少ないと判定されたものである。図10にその1例を示す。一方,CRI-Dでは,10症例すべてAと判定された。なお,OCCI-DOCCI-GOCCO-GOCCF-GCRI-Dともに経時的な色調の変化は観察されなかった。なお,パラジウム合金修復物は,本評価より除外した。

2)辺縁適合性

 各リコール時の臨床成績を表5に示す。

 B判定のものが,OCCI-G6症例,OCCI-D2症例,CRI-D5症例,OCCO-G2症例の計15症例あった。OCCF-GPdI-GPdO-GPdF-Gは,各リコール時ともすべてA判定であった。

 視診でB判定とされたものは,1症例のみでありこの症例を図11に示す。左下第一大臼歯に装着したOCCI-Gの遠心隣接面部辺縁に辺縁破折が認められた(図中矢印)。他のB判定14症例は,すべてSEM観察によって辺縁破折の存在が確認された症例である。図12は,OCCI-G装着6カ月後の口腔内写真である。肉眼的には,辺縁部の変化は観察されなかったが,図中矢印部の1週間後SEM写真(図13)と,6カ月後のSEM写真(図14)の比較から,OCCマージン部で200μm程度の微細なチッピングとセメントラインの露出が認められた。

 一方,A判定とされた症例のOCCI-Dの装着時SEM象(図15),3カ月後のSEM象(図16)を示す。OCC辺縁部およびセメントラインの経時的変化はほとんど認められない。このように,レジンセメントで装着したOCCI-DのB判定は,2症例のみであり,OCCI-GおよびCRI-Dに比較してチッピング発生の傾向は少なかった。

3)歯髄反応

 各リコール時の臨床成績を表6に示す。

 歯髄症状を訴えた症例は,OCCI-Dでは5症例,CRI-Dにおいては2症例,OCCO-Gでは3症例,OCCF-Gでは1症例,PdF-Gでは2症例あった。

 これら歯髄反応が認められた症例の内訳を表7に示す。OCC修復物で歯髄反応が認められた9症例のうち5症例は咬合痛であり,3症例は冷水痛,1症例は咬合痛と冷水痛の両者であった。これらのうち,咬合痛は1症例を除いて,咬合調整後1週間から3カ月で,冷水痛は,直接覆随処置を行ったOCCF-Gを除いた全症例において,自然消失している。これら自然消失例すべて,歯髄反応試験では正常値を示している。現在もなお咬合痛が持続している1症例は,本来,形成直後に塗布しなければならないDentin ProtectorVIVADENT社製)をインレー装着直前に塗布し,その後トータルエッチングを行った症例であった。

「.考察

1.色調安定性について

 本試験では,OCC修復物40症例中31症例は,透明性が正常な歯の範囲内であるものの,よく適合しているとは判定され得なかった。OCCは現在のところ4色のOCCガラスから選択し,表面にステイニングすることにより色調を再現する方法を採用している8)。結晶化熱処理温度を変化させるとOCCの物性と色調は大きく変化する。最終結晶化温度が850℃から950℃の間では,温度が高いほどその曲げ強度は向上する反面,透明性は減少する特徴を有している。結晶化熱処理温度750℃でマイカ結晶が,870℃付近でリチウム・アルミ・シリケート系のβ-スポジウメン結晶が析出する。βスポジウメン結晶が析出して網目状に絡み合い成長することにより,曲げ強度が向上するが,その結晶粒子径がλ/4以上の大きさになり光を散乱することにより透明性が減少すると推察されている9)。このため,機械的強度と天然歯に近い透明性を得るためにOCCの最終結晶化熱処理温度は900℃が望ましいとされていた10)が,色調再現性の点から言えば,症例によっては最終熱処理温度を900℃より低く設定する必要があると考えられ,機械的強度への影響を踏まえてさらに検索する必要があろう。

2.辺縁適合性について

 グラスアイオノマーセメントにて合着したOCC修復物のうち,特にインレーやアンレー形態のものでは短期間で辺縁部のチッピングの発生が多く認められた。その発生率はグラスアイオノマーセメントを使用したOCC症例の26.7%に及んだ。チッピングのほとんどはSEM観察で認められた微細なものではあったが,OCCI-Dの1症例は肉眼で辺縁破折が確認できるほどの範囲に及んでいた。

 OCCは従来の陶材と比較して大きな曲げ強度や圧縮強度を有する結晶化がラスではあるが,弾性限界内で破壊をおこす脆性材料であり,金属に比較して縁端強さには劣る。このため,金属製インレーやアンレーのように窩縁斜面やフィニッシングベベルにより辺縁の封鎖を図ることが困難であり,セメント層の露出は避けられない。また,支台歯形成や窩洞形成はバットジョイントを基本として行っているが,インレーやアンレーの内側性窩洞部のマージンは予防拡大の必要性から臨床上複雑な形態になり,製作物には微細なバリが生じやすい。このため,OCCI-GOCCO-Gにおいては口腔内に露出しているグラスアイオノマーセメント層の溶出にともない,セメントの裏打ちを失ったOCCマージン部の微細なバリが,咬合力などの外力によってチッピングをきたしたものと推察される。また,OCCF-Gでは,マージン幅が一定にしやすく,さらにマージンの形態も比較的単純で修復物の製作が正確にできるため,チッピングの発生を防止できたものと考えられる。

 一方,レジンセメントを使用したOCCI-Dのチッピングの発生はOCCI-Gより小さかった。山崎ら11)は,OCCをレジンセメントで接着すると曲げ強度の向上に寄与することを明らかにしており,インレーのようなマージン形態が複雑で修復物辺縁厚径の確保が不確実になりやすい症例においては,溶解する可能性が少なく歯質とセラミックスとの接着力が高いレジンセメントを用いた方が,辺縁破折防止にとって望ましいと考えられる。   

 また,山崎ら11)はOCCとレジンセメントの接着試験を行い,OCC内面のサンドブラスト処理およびシランカップリング処理を施すことにより,接着力の向上を計ることができることを明らかにしている。これらの表面処理を併用することにより,辺縁破折等の発生は極力避けることが可能と考える。

 CRI-Dはその半数に辺縁破折が観察された。今回使用したSR-Isositの曲げ強度は990kgf/cm212OCCの1/2以下であり,その差が発生率に現われたものと考えられる。

3.歯髄反応

 本試験では冷水痛,咬合痛などの歯髄反応が認められたものの,温水痛,自発痛などの症状は認められなかった。

 冷水痛に関しては,すべて経時的に消失している。本実験に用いたOCCの熱伝導率は,0.0042cal/cms℃であり9),エナメル質(0.0022cal/cms℃)に比較的類似しており,金合金(0.70cal/cms℃)よりかなり小さいため,支台歯形成時に歯髄保護処置を行い的確なセメント層を確保すれば,金属鋳造冠に比較して熱伝導による歯髄への為害作用は少ないと思われる。

 咬合痛に関しては,1症例を除いて経時的に自然消失している。咬合痛は,咬合圧により修復物に歪みが生じるとポンプ作用によって,象牙細管内の液の移動がおこり生じると推察されている13)。咬合力によるOCCの歪みが生じるとは考えにくいことから,セメントの歪みにより咬合痛が誘発されたものと思われる。咬合調整により,ほとんどの症例で咬合痛が消失しており,合着時の咬合調整は厳密に行われなくてはならない。

 また,セメントの気泡や接着不十分によるセメントと窩底に生じた間隙,あるいは窩壁とセメントの擦過現象なども咬合痛の原因となりうる14)とされており,セメント操作の的確さもまた要求される。

 本試験において,咬合痛が消失しなかった症例は,本来,形成直後に塗布しなければならないDentin Protectorをインレー装着時に塗布し,その後トータルエッチングを行った。

 Dentin Protectorは,歯髄に対して為害性の少ない接着性ライナーで,天然歯質に化学的に接着するので,修復物を象牙質に確実に接着させることができる。また,清掃した象牙質全域に塗布することによって象牙細管を封鎖して化学的・物理的な刺激を遮断し歯髄を守る作用をもつとされているが,完全に化学反応が終了するのは,塗布後3時間であるため,本症例においては,Dentin Protectorの完全硬化前にエッチング,合着操作を行ったことになる。そのため,Dentin Protectorの作用が期待できなかったと考えられる。

 レジンセメントの歯髄刺激性に関しては未だ見解が別れた状態であるが,形成面が歯髄に近接している場合や歯髄の過敏反応が疑われる症例では安全性を考慮して水酸化カルシウム製剤やグラスアイオノマーセメント等による覆髄・裏装を的確に行うべきである。

」.結論

 オリンパス光学工業株式会社が開発したオリンパス・キャスタブル・セラミックス(OCC)インレー20,アンレー10,フルベニアクラウン10症例を装着し,患者リコール時には,9種の診査項目について,U.S.P.H.S.の評価基準を参考に一部改編し,口腔内での直接診査を主体に,レプリカ模型によるSEM観察もあわせて行い,次のような結論を得た。

 1.試験症例の経過期間は平均6.8カ月であり,表面粗さ,辺縁部変色,二次齲蝕,対合歯の磨耗,隣接面コンタクト,体部破折の6項目についてすべての修復物に異常,変化は認められなかった。

 2.すべての症例において色調の経時的な変化は観察されなかった。OCC修復物の多くは,天然歯に比較して透明性が少ないと判定された。

 3.OCC修復物のうち10症例に辺縁部の微細なチッピングが観察され,グラスアイオノマーセメントを使用した症例がその多くを占めた。レジンセメントを使用したOCCインレーは,レジンインレーに比較してチッピングの発生率は小さかった。

 4.OCCを装着した症例で歯髄反応が9症例に認められたが,歯髄保護作用を有する接着性ライナーの使用上の不備に起因する咬合痛1症例を除いて,すべて経時的に消失した。

 5.使用セメントの選択や歯髄保護対策を厳密に行うことにより,生活歯支台を対象としたOCC修復物の臨床上の安全性は確保でき,有効性は高いと思われる。

 

文献

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